撮影部インタビュー 〈疑い続けることの大切さ〉

皆さん、こんにちは!
2021年は良いスタートを切れたでしょうか?
初めまして、映画『あすみ』のブログを担当いたします佐藤快太です。
今回は、撮影を担当してくれている伊藤りかさんにお話をお聞きしました。
撮影に限らず、編集やキャスティングまで多くの役割をこなす彼女独自の考え方が伝わる内容になっていますので、是非、最後まで読んでいただければと思います。

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ーまず、今回の制作実習4作品の中から『あすみ』を選んだ理由を教えてください。

伊藤:登場人物が私たちと同じ年代だけでなく、おばあちゃんや子どもまでいて豊かだなと思ったのが一番の理由です。それに、監督の人柄に惹かれた部分もあります。

ー監督のzoom越しでの印象が良かったんですね。実際あってみてどうでした?

伊藤:ちゃんと生身の方が好きでした。笑

ー現場ではカメラの扱いなど慣れた様子でしたが、普段から映像制作に関わっているんですか?

伊藤:ドラマの助監督をやったりしました。カメラはポートレートが多くて、写真がメインですね。映像では、大学の自主制作作品を手伝ったりしています。

ー高校時代から、映像を作っていたんですか?

伊藤:はい。高校の時は休み時間や放課後にずっとパソコン室にいて。うちの学校では、学年で物好きな人達が先輩への卒業メッセージや行事のドキュメンタリーを作るって言う伝統?みたいなのがあったんですよ。その時に、先輩が映像の作り方を教えてくれました。修学旅行で韓国にいったときは、40分くらいのドキュメンタリーを作ったりもしました。

ー映画の主人公も高校生ですが、そんな高校時代を送った伊藤さんはどんな生徒でしたか?

伊藤:文化祭とか、行事が好きでしたね。映像と同じで、みんなで作り上げていくって言う感覚が楽しかったんだと思います。

ーなるほど。みんなで何かをつくっていくのが好きなんですね。では、今回の班員の印象はどうでしたか?

伊藤:班員はみんないい人で、人として尊敬できる人ばかりです。 10月末からほんとにずっと一緒にいるなあって感じですが... 特に監督の佐々と過ごす時間が多くて、この前も年末の31日まで一緒に編集をしていたんですけど、年明けて1日にはまた会ってました。笑

ーでは、そんな佐々監督の好きなところを教えてください。

伊藤:人の意見を聞けるところですかね。人を信用して一緒に作品を作れるところが凄いなって思います。 現場で佐々が一通り人物の動きを決めたら、「じゃ、カット割は任せた」って笑顔で見つめられるんですよ。 信頼されている感じがして嬉しかったです。人に任せつつ、自分のこだわるラインはしっかり守るところを本当に尊敬しています。



ーただ、そんな監督を含めた班員の中では、伊藤さんの仕事の早さも凄いと良く話題になりますが、それを実現する秘訣みたいなのがあれば教えてください。

伊藤:そんなに早くないですよ。笑 でも、編集は撮影してから12時間以内にまとまった形のものにしようと心掛けています。とにかく自分を信用していないので、飽きないうちにやるように気を付けています。

ー確かに、撮影が終わるなりその場で編集作業に移っていましたね。

伊藤:はい。ただ反省もあって... 取り敢えず形にしたものはあまり精度が高くはないので、それを見た班員に誤解を与えてしまうことが何度かありました。それで結局やりとりがややこしくなっちゃたりもして。だから形にしたあと修正する時間をとって、もっとクオリティを上げていかないと思いました。

ーストイックですね。では、そろそろ撮影現場での話に移りたいと思います。 伊藤さんが今回の撮影中に意識していたことがあれば教えてください。

伊藤:意識していたことは大きく分けて2つあります。 1つ目は、現場で見たものに合わせて変えていこうって言うことです。全シーンカット割りは考えてあるし、撮影リハもたくさんやりました。仮にそれを先生に褒めていただいていたとしても、本当にそれでいいか疑い続けようと思っていました。

ー確かに、段取りの時もカメラを持って動き回っていましたね。

伊藤:はい。キャストさんが入ってやるのはその時が初めてなので、その動きに合わせてどこかもっといい画角がないか考えてました。撮影日の前に同じようなシーンがある映画を見て研究したりもしましたね。そんなに自分の中に正解がないので、いろいろやります。
2つ目は、何を撮るシーンなのかを考えてから撮ることです。カットごとに、何を目的にしているか忘れないようにしように意識しました。今回の授業で、なんとなく撮ると失敗すると学びました。笑 ただ、現場の瞬発力を大切にしたいなという反省もあって。是枝さんが「現場で思いついたことはだいたい正しい」と言っていたと思うのですが。良いかもなと思ってリハでやってみたけど、うまくいくか不安でやめといたカットがあるんです。でも編集で改めて素材をみてみたらそっちの方が良いことがありました。正直リハの素材を使っている箇所もあります。もっと挑戦しないと、と反省しています。

ーこの作品では、全体として人を動かす演出が多かったように感じますが、動く人を撮る上で気を付けたことはありますか?

伊藤:私がカット割りの時に真っ先に思いつくのは、カットバックがすごく多いものなんです。ヨリとかすぐ撮りたくなっちゃう。だからバーってまず思いついたものを書き出した上で、それを合体させていく感じで考えます。それで、なるべくカットバックを少なくできるアングルはどれか、この二つの動きの間をもてるアングルはどれかを考えてカットを決めました。 でもやっぱ、人がいっぱい動いている方が面白いなって この作品を通じて感じました。だからできるだけカメラを動かさずに、人の動きを捉えられる位置を探して 撮ろうと思って。

ーでは、『あすみ』という作品だからこそ、これを意識して撮りました!みたいなことがあれば教えてください。

伊藤:『あすみ』の脚本大好きなんですが、この映画は、主人公が本当に少しずつ変化していく作品なんです。だから、映画全体を通して緩やかな変化が感じられるように撮りたいと思いました。なので、人物の関係性や主人公の置かれている状況に合わせてアングルを変えられるように工夫しました。でも、単純に主人公が成長したから広い画角で撮る。とかではなくて、なるべくいろいろな方法で表現できたらと。ちょっと広い画角の中に、人物を窮屈に配置してみたり、レンズとか画面の余白とか、人の体のどのくらいを写そう かとかをちょっとずつ変えてみたりしました。

ー是非、伝わってほしいですね。 それでは、そんなこだわりが詰まったカットの中で、一番のお気に入りがあれば教えてください。

伊藤:いっぱいあって絞れないですね。キャストさんも美術も衣装もロケ地も本当に素晴らしかったので。 なのでシーンで言うと、主人公たちがいももちを作るところが好きです。これ、実は撮影日直前に差し替えら れて加わったシーンで、準備する時間もあまりなかったし、内容的にもあまり決まったものがなかったんです。監督と料理のシーンがある映画を見て確認したりしました。でも結局、現場に入ってみたらキャストさんが提案してくれた動きもあって、いいですねってそれをそのまま撮ったり。

ーあれこそ、現場で変わっていったシーンでしたよね。

伊藤:はい。現場で変わって現場で良くなって、いつの間にか大切なシーンになっていきました。

ー今回の撮影を経て、今後撮影として映像制作に関わっていく予定はありますか?

伊藤:もともと私はプロデューサーになりたいと思っていたんです。でも今回カメラをやってみ て、撮影もカット割り考えるのも楽しいなって。先生方がよく「楽しそうだね」と言ってくださったんですが、本当に全ての過程が愛おしくて幸せで、楽しかったので、なんでもやっていきたいです。

ーそれでは最後に、今回の授業を通して最も学んだことはなんですか?

伊藤:一番は、最初からいいものはできないなってことです。授業で初めに撮影シミュレーションをした時、ナメの位置をずらしたくてカメラを動かしたんです。そしたら講師としてきてくださっていたカメラマンの四宮さんから「そうなんだよね、でもそうすると視線がね」と。目線のことについてアドバイスをもらって。 その時に「あ、プロの方もこうしようと考えたときがあったのかな」って思ったんです。他の先生方も同じで、あんなに凄いものをつくっている人たちの試行錯誤した足跡みたいなものが、アドバイスの節々に垣間見える瞬間があって。ぐちゃぐちゃのカット割り表もあったり、スマホでとったグダグダな撮影シミュレーションもあったり、私たちもめちゃくちゃ失敗を繰り返して、良くなっていった感覚があるんです。最初はうまくいかなくても、頑張ろうと言う気持ちになりました。



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今回のインタビューでは、撮影担当ならではの作品に対するこだわりをたくさん教えていただきました。
そんな彼女の思いが詰まったワンカットワンカットを、1月16日の上映会(オンライン配信)ではどうぞお楽しみください!