『つかずはなれず』ブログ担当の木下です!
撮影も終盤に差し掛かり、一つひとつのシーンを細かく練っているところです。
ブログの内容ですが、河井監督にインタビューを行いましたのでその報告をしたいと思います!
木下
「まず作品のことからなんですが、どんなところからこのストーリーを思いついたんですか?」
河井
「気配って見えないけど、そこに誰かいるように感じられるって面白いなと、ずっと思っていました。それで、もし気配が見えたらどうなんだろうっていう想像をするところから始まりました。でもそれは別に映画を撮ろうと考えていたっていうわけではなく、日常的な疑問の延長としてありました。それで、3月ぐらいにこの授業を取ろうと思って企画を考えているときに、ちょうどコロナで会わないまま亡くなる人が増えました。イタリアの友達の家族が会わないまま亡くなったという話を聞いて、もし急に誰かが私の元からいなくなったら、受け入れられなくて処理できないんじゃないかなって思ったんです。それまでずっと考えていた気配っていうのと、誰かが急に亡くなったらどうするかっていうのを一緒に考えてみようと思ってこの話の原型ができました。」
木下
「作品の制作過程に行きますが、企画書とプロットを出した時の苦労や印象に残っている事はありましたか?」
河井
「プロットとかを書くのが初めてでした。頭の中で話を考えたりすることはあったけど、文字にして起こすっていうのはメモ書き程度にしかしてこなかったから、一個のアイデアを最後まで完結する話として物語にするっていう作業がすごく難しかったです。思っていたより大変でしたが、辛いとかじゃなくてワクワクすると言うか、楽しくてどんどん書きました。今までにないぐらい楽しかったです。」
木下
「河井さんが文化構想学部に入ったのは、文学の創作などをしたかったからですか。」
河井
「全然違います。テレビの CM が好きで CM について勉強したいと思って入りました。」
木下
「プロット書くために脚本を読んだっていう話も聞いたんですけど、勉強するためにどんなことをしましたか?」
河井
「有名な脚本の書き方の本は読みました。あまりにも無知すぎたので。」
木下
「すごく勉強熱心ですね。授業はどうでしたか?」
河井
「最初の授業で自分のプレゼンをする時は、ズームの画面を切っている間死ぬほど緊張していました。対面だったら耐えきれなかったかもって思って話していました。」
木下
「私の中では河井さんは何があっても動じないみたいなイメージがあって、緊張しているようには見えなかったです。班員の人も対面で会ったときに印象は違いましたか?」
河井
「ズームではみんなほとんど話さないし、真顔って言うか常に正面向いている顔しか見られなかったんです。集まって初めてちゃんと後ろ姿とか全体を捉えられた時に、元々知っている顔なのに知らないっていう状態を埋めていくのが面白かったです。その人の情報が後から補完されていく感じが。」
木下
「作品のプロットを直していく作業はいかがでしたか?」
河井
「会話を書くのが苦手なんだなっていうのをすごく感じました。企画書だと、流れを書いていれば成り立ったけど、主人公たちをより『そこにいる』みたいにするために言葉を考えるのがすごく難しくて。結構それは時間がかかりました。脚本自体も会話が少ないのはそのせいかもしれないです。」
木下
「次は撮影の話にいきます。河井さんは今回、監督は初めてということですが、映画サークルで撮影には1年以上関わっていますよね。映画作りへの関わり方は違いましたか?」
河井
「全然違いました。スタッフとして参加している時は、ただ『撮るの楽しい』っていう楽しい部分しか見れてなかったなと思って、その作品自体を作り上げていくっていうよりは現場にいることが楽しいっていうことが大きかったんです。監督になって初めて今まで関わってきた作品の監督たちがどれだけ苦労していたかというのも分かりました。現場で人をまとめたり、作品の中の一部を撮りながら、全体像が見えてないとできないから、そういう見通しみたいなものが必要だと、初めて自分が監督して気付きました。監督としての振る舞いみたいなものは今も悩んでいるけど、是枝先生からは『自分も演出しなきゃいけないよ』っていう話もありました。」
木下
「撮影で一番苦労していることは?」
河井
「『気配』を撮るってなった時に、見えないものを文字で脚本とかで書くのは意外と簡単だったけど、映像する時にどうやって撮るのかということはすごく悩みます。正解がないから、どう見えるんだろうっていうのがわからなくてそれが難しいです。先生達にも、私には気配としてうつっているけど、やっぱり幽霊に見えるとか、普通にそこにいる人間に見えるとか指摘されてしまって。どうしてもそこにいる人間が演じているからそう見えてしまうのはしょうがないんだけど、気配っていうのを大事にしたいからそのためにどうやって撮っていいのかっていうのがわからなくて…。先生達には考えすぎって言われるんだけど、どうしても考えちゃいます。私がカメラの事とかカットのこととか全然わかってないなっていうのを撮影しながら感じています。自分の知識不足からくる不安みたいなものと戦うのも結構大変で、精神面の弱さみたいなのが露呈してしまいます。」
「脚本を大事にしながら撮るって言うのもなかなか難しいものだなと。リアリティがないとは言いたくないんだけど、特に現実には見えてない物を撮っているので。どうしても普段の生活からかけ離れた SF みたいな捉え方をして欲しくなくて、日常の延長線にありえるかもしれないっていう風に撮りたいけどそれが難しいと思っています。」
木下
「知識不足だとか、経験不足といった話がありましたが、学びのチャンスもたくさんあったと思います。どうですか。楽しいですか?」
河井
「楽しいは楽しいです。 すごい授業の度に悔しいなって思います。結構今まで生きてきた中で一番自分と向き合う時間も長いので、自分のいい面だけじゃなくて今まで気づかなかったと言うか、目を逸らしていた弱い部分みたいなのも多いからすごい苦しいんだけど、そこで逃げたくないなって思います。それに、ずっと楽しいって思うのは基本としてあって、現場でいるのも楽しいし、脚本書いているのも楽しいです。辛くても楽しいって思っているのが自分でも不思議なんだけど、我ながらいいなって思います。」
木下
「逆に自分はこういうところ得意だったんだなと気づいたところはありましたか?」
河井
「頭の中で物語を考えたことはあっても脚本を書いて人に見せたことが一回もなかったからすごく心配でした。自分を丸ごと見せているみたいで。でも意外といいねって言ってくれる人が多くてすごく嬉しかったし、自分が持っている言葉で少なくとも人に面白いと思われているっていうのはよかったなと思います。」
木下
「四作品の中でも河合さんの作品を選んで撮りたいって集まってきた班員たちとのやりとりはどうでしたか?」
河井
「最初ずっとオンラインでしか会ってなかったから会うときにみんなどんな感じなんだろうって心配してたし緊張してました。私は3年生だから4年生の先輩も多いし、これで大丈夫かなって思ってたんだけど初めて会ったときに一瞬で好きになってしまいました(笑)。みんな面白いし、経験もあるし、こんな私の書いた脚本について真剣に考えてくれて、アドバイスもくれるし、厳しいことも言ってくれる人もいる。なんか脚本が私だけのものじゃなくてみんなの手を介して、皆のものとして作られていくのがすごいよかったです。」
木下
「撮影はチームとしてどんな感じでしたか?」
河井
「最初は私が緊張してたのもあるし、よくわからずバタバタしてるのもあって。振り回しちゃったなというか、頼りない感じだったんだろうなぁ、とは思ってるんだけど、みんながすごい素直に意見を言ってくれて、それぞれ思ってることを素直に言ってくれる班だなぁとは思ってます。私が引っ張ってるというよりは、みんなが私の背中を押したり手を引っ張ったりしてくれて、何とか前に進んでいっている気がします。自分が全然足りないところを補ってもらいつつ、みんなに引っ張り上げてもらってる感じですね。」
木下
「キャストの方々とはどうでしたか?」
河井
「しおり役の峰平さんは活発というか、まっすぐこっちに飛び込んでくる人だったから、最初は私が遠慮してるのもあって、受け止めきれない部分もあったかなと思います。でも撮影を重ねる度に向こうも心を開いてくれたし私もちゃんと向き合えるようになったかなと。私も言いたいことを言えるようになったし向こうも年下なんだけど、すごい励ましてくれるし、良い関係性ができてると思います。そのまっすぐさに救われる時もありますね。他のキャストさんも私が初監督と言うのを知ってくれていて、慮りながらさりげなくアドバイスしてくれたりするし、思ってることを言ってくれるから本当に感謝しています。こっちがお願いしているのに向こうに助けられている気がします。」
木下
「プレッシャーはありますか?」
河井
「プレッシャーはずっとあって、うまくいったと思ってもやっぱり駄目だったって後から落ち込むこともあるし。あんまり現場でそういう感情の振れ幅を見せるのはよくないかなと思って、そこは気にしてます。精神的にたくましくなったとは言えないかもしれないけど、演出は上手くなったと自分でも思います。最初は身構えすぎてたから、今はもっと自然に近づいていってる気がします。緊張感はありつつも、変に力まずに、程良い抜き加減を目指して頑張ってます。」
木下
「もしまた監督をやる機会があったらやりたいですか?」
河井
「それはちょっとまだ考えられないですね(笑)。とりあえずこれが終わるまでは。今はこれしか考えられないです。」
木下
「最後に一言お願いします。」
河井
「どの班も皆、頑張ってそれぞれすごい考えて、コロナでいつもより難しい状況の中で頑張ってるので、1人でも多くの人に見てもらえたらいいなと思います。」
河井優花監督率いる『つかずはなれず』、11月上旬から主に週末に7日間の撮影を重ね、残りの撮影予定日はあと1日となっています。
河井監督をはじめ、作品に携わる人たちがそれぞれ「チャレンジ」できる、濃い時間になっていると感じています。
残りの撮影、そして編集も、楽しみながら全員で挑戦を重ねていきます!
お楽しみに!
2020.12.18(金)