怒涛の更新をしております、『あすみ』班ブログ担当の堀部です!
今回は、助監督の濱﨑菜衣さん・野原大祐さんと、照明部の佐藤快太さんに話を聞きました。
縁の下の力持ちな3人だからこそ話せる、撮影での裏方業務から、ロケハン・撮影リハなど準備段階のエピソードまで盛りだくさんです。
『あすみ』をまた違った角度から楽しんでいただけると思いますので、ぜひ最後までご覧ください…!
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—みんなが4作品の中で『あすみ』を選んだ理由を教えてください!
濱﨑:単純にプロットが一番面白いなと思っていたのと、登場人物の年齢幅が広いからかな。あとはやっぱり一番は佐々さんが監督をする班だったら良い作品になりそうだし、良い班員も多そうだなと思いました。
野原:前にマーティン・スコセッシが「一番クリエイティブなのは一番プライベートなことだ!」と言っていたんだけど、この企画は佐々さんのプライベートな出来事から生まれた作品だから、唯一無二で面白いなと思いました。うまく言えないけど、単純に佐々さんの人柄が出ていて、かつオリジナリティがあるってことかな。あと、佐々さんなら班員の意見もちゃんと聞いてくれそうだな、と。
佐藤:候補として上がった時点で、映像になった時のイメージが一番明確にできたからです。企画書を読んでいて、登場人物みんなの顔が自分なりだけど浮かんできて。それに、世代を超えた人たちの交流を描いている点も好印象でした。でも、なんだかんだ直感で選んだ部分が大きいです。
—菜衣ちゃんは映画制作の経験が豊富で、商業映画に参加したこともあると思うけど、「学生映画ならではの楽しさ」は何ですか?
濱﨑:商業映画はそんなに時間をかけられなくて、撮影リハもこんなにやらないし、脚本やカット割りを考える時もみんなが意見を言えるわけではないから、単純に恵まれた環境だな、と思います。一応部署を作って役割分担はしたけれど、セリフや動きについて全員が意見を言うのは学生映画だからできることだし。
—それぞれの部署の立場から、撮影で苦労したことと楽しかったことはありますか?
佐藤:照明として苦労したことは、現場では大きいモニターがなく、照明を当てながら画面を見ることができない状況だったので、肉眼とカメラ越しに見た光の当たり方をすり合わせていくことかな。一方で、照明を当てていることで人の顔がちゃんと見えるようになったのが映像で見て取れた時は、楽しいというか、嬉しいなと感じました。
濱﨑:他の現場では自分がチーフの助監督として入ることはなかったし、今回私は制作部も兼ねていたから、目の前のお芝居以上に裏方業務がちゃんと回っているかたくさん意識しないといけなかったのが大変だったな。大変だったけど、終わってみたら楽しかったな、ということが多かったです。あと面白かったのは、最初が泊まり込みの撮影だったので、クランクインの時からみんなが同じシャンプーの匂いをさせていたこと(笑)
野原:苦労したというわけじゃないけど、雰囲気良くやりたいと思っていたから、そこは気を遣っていたかな。楽しかったことは、ロケハンでのドライブだな(笑)ロケ地の丘には13回くらい行きました。あとは、撮影リハも含め、スタンドイン(セッティング中などに俳優の代役をすること)が楽しかった。
濱﨑:撮影リハの野原くんの演技は是枝先生にも褒められてたよね(笑)
—今話題に出ましたが、『あすみ』では撮影に入る前に、班員が何度も現場に行ってリハーサルをやりましたよね!撮影リハを行ってみて気付いたことはありますか?
野原:短いシーンを何十回もやって、どこがダメだったのかを考えて動きを決めていくのが、演劇の稽古に似ているなと感じました。そこに作品の伝えたいことが伝わるかどうかがかかってくるとも感じていて、それは撮り方だけではごまかせない部分だと思います。見せ方もそうだけど、登場人物の心情なども、リハーサルをやらないと制作陣が気付けないことはたくさんあるなと。演劇でいう稽古だとしたら、撮影リハは映画を作る上で結構大事なんじゃないかな。
—『あすみ』班の雰囲気についてはどのように感じていますか?
濱﨑:最初の顔合わせの時からとんでもなく怖い人とか絶対いないな、と思えるほどみんな優しいです。私は普段人と話す時はちゃんとオチまで考えて言うようにしてるんだけど、『あすみ』班はそういうのいいや!って思って(笑)「おなかすいた」とか普通に言える人たちで良かったな。
佐藤:なんだその使命感(笑)
—普通に言っていいんだよ!(笑)
濱﨑:あと、佐々班は集まりがよかった。お金がもらえるわけじゃないのにこんなに集まるのは、みんなが『あすみ』に対して自分の作品だという愛着を持っていていることもあるし、佐々さんの人柄もあるし。ロケハンの段階から全員がいて、みんながレギュラーメンバーっていうのが珍しくて、すごく良い班だな、と思いました。
佐藤:僕は、コツコツと積み重ねができる人が多いな、と思いました。自分がわりと最短ルートで物事をやりたい人間なんだけど、今回の『あすみ』班ではロケハンや撮影リハを何度も、しかも毎回一生懸命遠回りしてやっていて(笑)でもその過程が『あすみ』制作には必要だったんだと思うし、そういうことを焦れずにできる人が多くてすごいな、と。
—次は、助監督の二人に質問です。撮影を進行する上で意識したことはありますか?
野原:ダラダラするのが嫌だったから、メリハリがつくように心掛けていたかな。タイムスケジュールは守らなくてもいいけど、守ろうとすることでメリハリが生まれると思うので、班員が友達のような雰囲気なぶん、こういうことで縛りが必要だと考えていました。
濱﨑:授業で是枝先生が「1日のスケジュールでいちばん粘りたいシーンを決めると良い」という話をしていたので、監督には毎回それを確認していました。『あすみ』は夕方や夜明けのシーンがあるし、子役の方は絶対に20時までしか撮影できないので、時間の制約が多くて。でも監督には演出面になるべく集中してほしかったので、あまり「スケジュール押しています!」というようなことは言わないように心掛けました。ただ、それだと破綻しちゃうから、監督に1日のスケジュールを見せながら、「どのシーンを粘りたいか」「そのぶん他のシーンはオンタイムで進める意識は持ってほしい」という話をいつもしていたかな。
—続いて、照明部の快ちゃん。『あすみ』では夜に昼のシーンを撮影するなど、照明部が活躍する場面がかなり多かったけど、特に現場で意識したことはありますか?
佐藤:だんだん意識できるようになったことだけど…。照明はあまりセッティングに時間をかけるわけにもいかないし、撮る前に照明がOKか確認があるわけでもなかったので、スケジュールを見ながら次のシーンのセットをするようにしていました。できるだけ現場を止めないように、なるべく先回り、先回りで動こうと。
—印象に残っているシーンや、一番の見どころはどこですか?
野原:主人公たちがこたつで刺繍をしているシーンは、佐々さんも気合いを入れたいと言っていたので、特に集中して撮影に臨んだと思うんだけど、あの時間が濃密で好きだったなあ。あそこの、俳優の方々の繊細なお芝居をぜひ見ていただけたらと思います。
濱﨑:刺繍のシーンは私も好き。他だと、主人公たちが縁側で羊羹を食べるシーンかな。ここでは千里役の有香ちゃんがシャボン玉を吹くけど、子どもらしく遊んでもらえたのが良かったです。主人公のあすみと千里が仲良くなったこともよく伝わるし。あと、このシーンには咲さんの友人の隅田さん役で天衣織女さんに出演していただいたのですが、天衣さんのアドリブが大好きですね。
佐藤:いももちを作るシーンは、夜に撮ったけど照明で昼に見せるようにしていて、完全に見た目が変わっています。撮影中に一番難しかったのは、咲さんの家の玄関のシーンかな。構造的に夜は暗くて、逆に昼は日光が挿し込んですごく明るくて。あそこで顔がちゃんと見えていたり、光で不自然な顔になっていなかったりできたところはぜひ見てほしいです。
—最後に、映像制作実習を通して最も学んだことは何ですか?
濱﨑:相手を尊重することかな。今回珍しいくらいにみんな『あすみ』を一番に考えていて、ほとんど毎日会ってるし、みんな他の授業どうしてるの?ってくらいこれに懸けてたじゃん(笑)だからこそ、各部署自分の仕事に責任誇りをもってやってるんだろうなって思う瞬間がどんどん増えていって。相手を尊重して何かを言うっていうのは、修正部分がある時もだし、ほめる時も大事だな、と学びました。
野原:1年前に演劇をやった時に思ったことと似てるんだけど、「粘るって大事だな」って思いました。やっぱり最後まで脚本を粘るとか、美術にこだわるとかそういうことで最終的に良い作品になるかどうか決まるような気がしていて。自分は最後の最後でいい加減になるところがあると思っているんだけど、この授業でまた改めて頑張ろうって。
佐藤:最初、「考えている時間」と「手を動かしている時間」のバランスが難しいと思ってたんだけど。あんまり頭の中だけでやっていてもダメだし、何も考えないで行動に移しちゃって結局時間かかってしまう時もあるし。最初は圧倒的に考えている時が長すぎた、という印象があったけれど、撮影が進むにつれて配分が少しずつ上手くなっていったと思います。
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『あすみ』の現場でいちばん声を出していたのは実はこの3人かもしれません。スケジュールが厳しい日も、ものすごく寒い撮影でも、たくさん駆けずりまわって現場を支えてくれました。
作品には見えない働きも多く、可愛いスケジュール表を作ってくれたり、あるはずのない風を起こしたり、華麗でみんながついスヤスヤ眠ってしまう運転をしてくれたり。
準備段階から本番まで、頭と手と足を動かし続けた3人の努力の結晶にぜひ注目してみてください!